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第1回記念講演「子どもの心と体の危機」(2007年7月21日)

山梨大学准教授 中村和彦氏に「子どもの心と体の危機」と題して
総会記念講演をしていただいた。

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  写真家、荻野矢慶記さんが、1970年代から東京の公園などで遊ぶ子供たちを撮り続けた作品に「街から消えた子どもの遊び」(大修館書店)があります。缶蹴り、砂遊び、サッカーに戯れる子どもたちの顔はどれも生き生きとして、笑顔にあふれています。

 しかし、現代の子供たちは、どうでしょうか。子供たちは、受験勉強、ゲーム遊びに追われ、外遊びが少なくなってきています。でも、本当は、外で遊びたいはずです。それができないのは、ほんの30年前、都会でもあった空き地がなくなっているなど遊べないことも一因です。つまり、「空間」「時間」「仲間」のいわゆる「三間」(さんま)がなくなり、これが子供たちに暗い影を落としています。

 無表情な子どもが目立ち、転んでも手が付けず顔面をけがしたり、腕を骨折したりする子や、夜更かしをし、朝ご飯も食べずに学校に行き、午前中全く集中できない子どもも増えています。子どもの体は肉体的にも、精神的にも危機に陥っていると言えます。こうした現状を鋭く突き、レポートしたのがジャーナリストの滝井宏臣さんが書いた「こどもたちのライフハザード」(岩波書店)です。

 本日は、こうした状況を踏まえ、現代の子供たちに何が起きているのか、改めて考えていきたいと思います。まずは、こころの危機ですが、現象として6点あります。すなわち①子どものストレス増加②意欲の欠如③判断する能力の低下④工夫ができない⑤情緒や感情表現(出)の欠如⑥社会性のなさ―。が挙げられます。

 体力的な危機も深刻です。まず、①下がり続ける体力低下があります。2005年に文部科学省が発表した「体力・運動能力調査」によると、小学生の走る、跳ぶなどの基礎体力は1985年から急激な低下傾向にあります。②点目は、子供たちは動くのが嫌いということです。30年前の子供たちの歩行数は、一日平均2万7000歩でしたが、今や約1万歩です。中には4000歩という子もいます。③点目には、子どものけがで、顔面の傷や手首の骨折が多いということです。転び方を知らずに顔面を地面などにぶつけてしまっているようです。そのほか④疲れたとぼやく子どもが多い⑤生活習慣病を患う子どもの増加⑥アトピー性皮膚炎や低体温の子どもの増加など体内での異変―があります。

 どうしてこういう現象が見られたのでしょうか。それは先ほども触れましたが、子供たちを取り巻く環境の変化、「三間の喪失」と、子どもの遊びの変遷があります。

 今の子どもたちの遊ぶ時間は、親の世代(30~40歳代)の半分から3分の1です。遊びも、親の世代の野球、メンコなど体を動かすものから、テレビゲーム、お絵かきなどに変わってきています。

 さらに、子供たちは、「孤食」「欠食」「個食」「固食」の食環境に置かれています、つまり一人で食べたり、食べなかったり、決まったものを食べたり(好き嫌い)するなど、家族全員で食卓を囲んだ三〇年前とは大きく変化しました。

 では、こうした状況を解決するにはどうしたらよいのでしょうか。

それは、子供たちが、遊びたくても遊べない状況であることを親や教師ら大人がまず自覚し、積極的に外遊びをする機会を作ってやる視点を持つことです。東京世田谷区の羽根木公園では、子供たちが自由に遊べる「プレーパーク」を設置しています。ここでは、少々危ないことでも、子供らの責任で思い切り遊んでもらおうという環境が整備されて、子供たちの表情は、荻野矢さんが撮影した30年前の子どもと変わりないものです。

 親や大人は、子どもたちの現状を知ると大変ショッキングだと思いますが、外遊びの機会が少なかったことが大きな要因であることを認識して、少しずつできることから始めたいものです。けっして他人と比べないことです。現在、子どもの学力低下が叫ばれていますが、学力はしっかりした心と体の土台の上で築かれていくものです。しっかりした体を作ってこそ学ぶ力もついていくはずです。子どもが元気に、幸せに過ごし、成長するには、私たち大人も豊かな生活、生き方をしていくことが大事です。生活の中に三つの間を作っていくことです。

 これからは「からだとこころの発見塾」の皆様と一緒に、子供たちの豊かな心と健やかな体の成長を支援できる仕組みと仕掛けをできたら幸いです。本日はありがとうございました。

                     (以上 文責・長谷川聖治)